ノンフィクションに登場 母と娘

まだ遠くない昔、冬の寒さを逃れて沖縄に降り立ち、初めて本場三線の演奏を聞いた時には、大変感銘を受けました。顔に刻まれた皺の影響も有ったかも知れませんが、演者の奏でる乾いた音色からは、言い知れぬもの悲しさが溢れ出ており、おのずと沖縄と言う土地の歴史を思い起こさせる瞬間となりました。僅か本の弦での演奏では表現能力が乏しく、逆にその演者の心の具合と言うか、気持ちがそのまま表れている様な気がしたのです。

 先月3月25日(日)の昼過ぎ、民放テレビで、ある母と娘の葛藤を描いたノンフィクションが放送されていました。母子家庭で育った娘は、幼少期に母の母国である中国の楽器、二胡の魅力に取り憑かれ、成人した今では二胡の奏者として活動しているそうです。

母は女で一人、娘を育てる為に、太極拳や中国語の先生をしながら生計を立てて来たそうですが、異国の地で、それは決して楽ではなかったと想像出来ます。沖縄に住んで、地域の方々と太極拳の普及に尽くした姿が、番組でも紹介されていましたが、逆境に負けない風土、苦しみも笑顔に変えてしまう土地柄が、彼女にとっては良かったと思います。

 番組では、母親の活動的な姿が数多く映し出され、苦労の色を無欠のバイタリティで覆い尽くしていて、「生きる力」そのものが画面から拡散しています。

 しかしそんな苦労を乗り越えて来た母からしたら、二胡奏者としての娘は「殻を打ち破れていない」状態であり、その不満をストレートにぶつけられた娘は脆くも涙を流します。

 二胡は三線よりも更に少ない二弦しかなく、指をスライドさせて弾く事が多いので、結果として緩やかな音を出すのは得意ですが、激しさを表現するのには難しく思えます。でも表現者として、殻を打ち破れば、自分の心がそのまま楽器に乗り移る筈だと、母親は娘に訴え続けていました。

 2月12日(月)日本橋社教ホールにて、メインのコンサートが行われ、そこで彼女は見事な演奏を披露してみせます。果たして自分の殻を打ち破ったのでしょうか?最後は母と娘の溢れんばかりの笑顔で番組は終了しています。

 同じ週の2月17日(土)、「いきいき浜町」で臼井麻耶さんによる二胡の演奏会を行いました。番組を知らずに浜町の舞台を観ていましたが、彼女こそが上記ノンフィクション、主人公親子の娘、その人です。腕前は勿論、私はその音の瑞々しさ、初々しさに聞き入ってしまいました。彼女の二胡に対する誠実な思いが否応なしに伝わるステージだったと思います。

 当館では、年に一度くらいのペースで、彼女にコンサート開催をお願いしてきたそうですが、このノンフィクション番組を観た後では「いつまで来てくれるかなぁ」と言う心配も過ぎりました。前回見逃した方の為に、今年度も開催できるよう調整したいと考えていますので、どうぞご期待下さい。

 また、もう一人の主人公となった元気お母さん、臼井麟さんが気になる方は、いきいき浜町の「陳式・太極拳」「楽しい中国語」にご参加下さい。いずれも麟さんに講師をお願いしていますので、テレビのままの姿を見る事が出来ます。是非、生の彼女の「生きる力」に触れてみて下さい。
 
















4月 貞嶋

お知らせ

2011/03/29

4月1日より、勝どき敬老館の管理・運営を指定管理者としてアクティオ株式会社が行なうこととなりました。みなさまよろしくお願いします。

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