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桜川

お家で浮世絵★第6弾 ♪

いきいき桜川・浮世絵セミナー、森山先生より
お家で浮世絵を楽しもう第6弾をいただきました♪

↓ ↓ 以下全文掲載 ↓ ↓


【浮世絵でたのしむ江戸のあれこれ】

令和3年7月吉日

ようやく梅雨が明けました。暑中お見舞い申し上げます。

先月に続きまして読み物をご用意しました。引き続きお付き合いいただけますとうれしく存じます。

 

今回ご紹介するのは五雲亭貞秀の「東都両国ばし夏景色」。隅田川の花火の様子を描いています。

貞秀は役者絵や美人画で一世を風靡した歌川国貞(三代目歌川豊国)の門人で、幕末から明治にかけて活躍しました。得意にしたのは鳥瞰式の風景画(名所絵)。激動の時代の姿を精密に描いた作品たちは、とても魅力的で、「空とぶ絵師」とも言われました。が、飛行機も飛びぬけて高い建物もない時代に、いったいどのように「鳥瞰」を手に入れたのでしょうか。興味津々です。

この浮世絵で印象的なのは、画面中央の両国橋をぎっしりと埋め尽くす人々と、隅田川に浮かぶ船の多さ。いかに花火が楽しみにされていたかよくわかりますし、密を避けねばならない今の世からは、うらやましいような景色でもあります。

この両国の花火は隅田川(大川、浅草川、両国川とも呼ばれました)の川開きに由来し、現代の隅田川花火大会につながるものです。毎年旧暦5月28日には隅田川の川開きが行われ、打ち上げ花火が上がりました。江戸後期に喜田川守貞が記した『守貞謾稿』には次のような記載があります。「五月二十八日浅草川川開き。今夜初めて両国橋の南辺において花火を上ぐるなり。諸人、見物の船多く、また陸にても群集す」。わくわくとその日を迎えた江戸の人々の熱気を感じるようです。ちなみに旧暦5月28日は今年の暦では7月7日の七夕にあたり、連日の梅雨空でしたね。

この川開きの花火は、飢饉やコレラの大流行で亡くなった人々の慰霊のために、享保18年(1733)に将軍吉宗が始めたとされます。今年も隅田川花火大会は中止となりましたが、今の疫病流行を乗り越えて美しい花火を眺めることができる夏を、心待ちにしております。

 

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/73568?searchField=All&sortBy=Relevance&where=Japan&what=Prints&ft=summer&offset=0&rpp=20&pos=8

 

画像はメトロポリタン美術館のものです。上記のリンクから拡大してご覧いただけますので、どうぞじっくりとご覧ください。拡大していただくと、赤い四角のなかの細かい書き入れ(「ゑこう院」「よこあミ」など)も見ることができますので、ぜひじっくりと。

今回はこれにてお開きです。秋こそはどうか皆さまにお目にかかれますように。

暑さ厳しき折、どうぞ御身お大事にお過ごしくださいね。

「浮世絵セミナー」講師 森山暁子