お家で浮世絵★第8弾 ☆
いきいき桜川・浮世絵セミナー、森山先生より
お家で浮世絵を楽しもう第8弾をいただきました♪
↓ ↓ 以下全文掲載 ↓ ↓
【浮世絵でたのしむ江戸のあれこれ】
令和3年9月吉日
ようやく涼しくなり、空の高さにも、雨のようすにも秋の訪れを実感する毎日です。いかがお過ごしでしょうか。
先月に続きまして読み物をご用意しました。引き続きお付き合いいただけますとうれしく存じます。
今回ご紹介するのは月岡芳年の「月百姿(つきひゃくし)」より「悟道乃月(ごどうのつき)」。「月百姿」は月をテーマとした100枚揃いの作品で、明治18~25年(1885~92)に制作されました。芳年は明治25年に亡くなりましたから、「月百姿」は最晩年の作品にあたります。
満月を指さし、朗らかに笑っているのは布袋(ほてい)様。中国の昔の禅僧ですが、七福神の一人としてお馴染みですね。丸々とした体に大きな布袋を携えた姿はいかにもおめでたく、眺めているだけでこちらも頬が緩むよう。芳年はもともと歌川国芳の弟子で、ユーモアのある描きようは師匠と通じるものを感じます。
ではこの絵の満月は何を示しているのでしょう。「悟道」とは仏教の言葉で、悟ること。人の心に本来備わっている悟りの象徴として禅宗では円を描き、それを円相といいます。満月はこの円相、すなわち悟りを表しているのでしょう。悟りの円い月を眺めて笑う布袋様、というわけです。
皆さんは、月を見て何を思いますか?来し方を懐かしんだり、大切な人を思ったり、月を詠んだ和歌や物語を思い浮かべたり、はたまた月の美しさにただ見惚れたり。今のように自由に行動できない時にはなおさら、月を眺めて思いを巡らせることも増えるのではないでしょうか。14世紀中頃に編まれた『風雅和歌集』には、「見る人に物のあはれをしらすれば 月やこの世の鏡なるらむ」という崇徳院の歌が収められています。月とは今も昔もそういう特別な存在なのだと思います。
今年の仲秋の名月は9月21日にあたります。悟りを得るかどうかは置いておくとして、布袋様のように笑顔でお月見ができますように。
画像はシカゴ美術館のものです。上記のリンクから拡大してご覧いただけますので、どうぞじっくりとご覧ください。
今回はこれにてお開きです。どうぞ御身お大事にお過ごしくださいね。またお会いできる日を心待ちにしております。
「浮世絵セミナー」講師 森山暁子