お家で浮世絵を楽しもう♪
浮世絵セミナーの森山先生から
お家で楽しめる浮世絵講座第二弾としてまたもや寄稿いただきました♪
↓ ↓ 以下全文掲載 ↓ ↓
【浮世絵でたのしむ江戸のあれこれ】
令和3年3月吉日
はやくも弥生。日ざしの明るさと花粉の勢いに春を感じる毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。
前回に続きまして読み物をご用意しました。お付き合いいただけますとうれしく存じます。
さて、今回ご紹介するのは窪俊満(くぼ しゅんまん)が描いた一枚。題名は記載されていませんので、通称として「春の野」としましょう。春の野に出かけた一行をさらりと描いているようですが、よく見ると背景の美しい春霞や輪郭線を用いない草花の表現、着物の模様の細やかさなど、だいぶ凝った作品です。
春のたのしみはいろいろありますが、野遊び(野掛け)もその一つ。春の野に出かけ、食事をしたり花を眺めたり草を摘んだり。ゆったりと過ごすのは春なればこそ。いわばピクニックです。
『萬葉集』には「春の野にすみれ摘みにと来し我そ 野をなつかしみ一夜寝にける」という山部赤人(やまべのあかひと)の歌が載ります。野遊びがたのしくて一晩寝てしまったというような意で、寒い冬が終わり春の野遊びがいかにうれしいものであったか、よくわかります。この浮世絵にも、麗らかな春のよろこびが満ちているように思います。
ところで、この作品はずいぶん横に長い形です。長判といい、空間を広く捉えてパノラマ画面を見ているような感覚になります。実はこれは摺物(すりもの)という特注品。狂歌などの愛好者がスポンサーとなって作らせた非売品なのです。洒落や粋を好む彼らだからこその凝りようと品のよさ。見飽きない一枚です。
画像はシカゴ美術館のものです。以下のリンクから拡大してご覧いただけますので、どうぞじっくりとお楽しみください。
https://www.artic.edu/artworks/22473/gathering-spring-flowers
今回はこれにてお開き。またお目にかかりますことを楽しみにしております。
「浮世絵セミナー」講師 森山暁子
※リンク先は英語表記になっています。