お家で浮世絵★第5弾!!
いきいき桜川・浮世絵セミナー、森山先生より
お家で浮世絵を楽しもう第5弾いただきました♪
↓ ↓ 以下全文掲載 ↓ ↓
【浮世絵でたのしむ江戸のあれこれ】
令和3年6月吉日
いよいよ雨の季節ですね。いかがお過ごしでしょうか。
先月に続きまして読み物をご用意しました。引き続きお付き合いいただけますとうれしく存じます。
今回ご紹介するのは歌川広重の「東海道五十三次」より「大磯」。相模国大磯宿への入口を描いており、雨のなか松並木の街道を旅人が進んでゆきます。
「大磯」と記された隣に瓢箪型の赤い印のようなものがあり、ここには白抜きで「虎ヶ雨(とらがあめ)」と記されています。夏の季語でもある虎が雨は、旧暦5月28日に降る雨のこと。曽我兄弟の物語に由来します。
大磯には遊女が多くいて、曽我十郎の恋人である虎御前(大磯の虎)もその一人でした。東海道はこの先で化粧坂(けわいざか)という上り坂になりますが、そこにあった井戸の水を汲んで虎御前が化粧をしたことが名の由来とされます。
建久4年(1193) 5月28日、曽我兄弟は苦難の末に父の敵(かたき)である工藤祐経(すけつね)を討ちますが、十郎は討死してしまいます。それを知り虎御前が流す涙が雨となって降ると伝えられているのです。
『曾我物語』では虎御前が悲しみに沈む様子が描かれます。十郎を思って朝晩嘆き暮らし、19歳で出家しました。そして十郎が亡くなった場所を訪ねて「遅れ出づ我が恋ひ居れば白雲の たなびく山を今日(けふ)は越ゆらん」と詠みます。「遅れてここまでやって来てあの人のことを恋い慕っています。けれどあなたは冥途への旅をして、今日は白雲のたなびくあたりを越えているだろうか」といった意味でしょうか。
このように深い思いの虎御前だからこその、虎が雨なのでしょうね。
画像はメトロポリタン美術館のものです。上記のリンクから拡大してご覧いただけますので、どうぞじっくりとご覧ください。
ところで旧暦5月28日は今年の7月7日、七夕にあたります。はたして虎御前の涙雨は降るのでしょうか?楽しみに待ちましょう。
今回はこれにてお開き。また皆さまにお目にかかりますことを心待ちにしております。
「浮世絵セミナー」講師 森山暁子
※リンク先は英語表記になっています。